第2話 組織論 I
一、 科学的管理法…産業社会の確立を背景とする。テイラーの『科学的管理法』によってまとめられた。
1、 管理と作業の分離
○従来作業者は自分で仕事を選び、方法を見付け、技術を磨くというような職人的立場にあったが、科学的管理法はそうした作業者から管理の仕事を切り離し、作業者を作業そのものだけに専念させる。すなわち、仕事選定・方法発見・訓練といった管理の問題は新たに管理者を設けて彼らの仕事とするのである。なお、作業者と管理者の仕事と責任は均等に配分される。
2、 作業の標準化
○作業と管理のマニュアル化→時間動作の研究→達成すべき一定の作業量が作業者に課される結果となり、ゆえに科学的管理法は課業管理に他ならなくなる。
3、 機能別職能制
○能率的な管理を可能とするために、指示を仰ぐべき職長を作業の内容ごとに置き、それぞれの職長が作業者に専門的な指示をなすことができるようにする。
二、 古典的組織論…大企業等の大規模組織をいかに管理するか、という問いに対してギューリックは『管理科学論集』の「組織理論に関する覚書」にて提唱した理論
1、 分業と統一性
○複数の人々の間で一定の仕事を分け(分業)、分けられた仕事間を調整する(統一性)。
○この統一性は指示を仰ぐ上司を常に一人とする命令一元性の原則によって保たれる。そして、上司が管理しうる部下の数は限られるので、上司の命令が部下全員に行き渡るように、部下の数は一定に保たれなければならない(統制範囲、スパン オブ コントロール)。
2、 同質性の原則
○どのような原則でもって統制範囲内の部下を一人の上司の下に置けば良いのかという問題。
○ギューリックは[1]目的、[2]過程、[3]対象、[4]地域という4つの基準の上で同質性を有する仕事を行う者を一人の上司の下に置くことを求めている。
3、 総括管理機能
○上司を必ず一人とし、同質性の原則と統制範囲を守って分業を行えば、結果的にピラミッド型の組織(ヒエラルキー・階統性)が出来上がる。そして、その頂点には唯一人の長が存在し、その長が担うべき計画、組織、人事、指揮監督、調整、報告、予算といった機能を総括管理機能という。
○しかし、組織が巨大化するに連れて、長一人で全ての総括管理機能を担うのは困難になる。そこで、各機能を分担する機関が設けられる必要が出てくる。この機関をスタッフといい(プロシア軍参謀部に由来)、スタッフからラインに対する命令や指示は一切認められない。
三、 人間関係論…組織は人間の集合体であるので、古典的組織論(フォーマル組織)のように公式、定型でもって単純に割切れるものではない。具体的人間関係にこそ主眼を置くべきとする考え方(インフォーマル組織)。
1、 ホーソン実験
○ホーソン工場での実験以前は作業の物理的環境と生産性の間に直接の関係があると考えられてきた。
○しかし、実験によって物理的な環境の変化と生産性の増減との間には人間の感情や態度が介在しており、それらの在り方が生産性に大きな影響を及ぼしていることが判明した。人間の感情、経験もさることながら、人間関係が生産性に大きな影響を及ぼす。この人間関係こそがインフォーマル組織である。
2、 インフォーマル組織の位置づけ
○フォーマル組織があってインフォーマル組織が存する。
3、 フォレット
○『新しい国家論』を著し、自由は人々との交流の中でこそ得られるものであるとし、個人我(自我としての私)から集団我(集団としての私)への移行による人間精神の解放を求めた。
○組織トップの決定、すなわち最終権威を過度に強調するのは非現実的である。権威はトップにだけ備わるものではなく、積み上げをする各職能に伴っている(複性権威)。
○横暴や放任の危険から、特定の人間が個人として他の人間個人に命令を出すことは否定されるべきである。逆に直面している状況が求める命令を雇用者も被雇用者も探すべきである。当然、状況によっては、部下が上司に命令を出すことも有り得る。
○組織の中で、紛争は不可避であり、紛争を組織の発展の為に用いるべきである。ここでいう紛争とは意見の相違であり、意見の相違を解消するために抑圧、妥協、統合という手段がとられる。そのうちの統合によれば、互いが犠牲を払わずとも紛争が解決される(建設的紛争)。