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目からウロコの 行政学入門

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第3話 組織論 II

※組織論 I では、行うべき仕事は自明の前提とされていた。組織論 II では組織がいかなる仕事を行うことを決定するのか、組織の意思決定について述べる。組織の意思決定に焦点を当てるのが現代組織論であり、意思決定の分析が政策決定分析に結びつく。また、並行して、人間関係論に発する社会心理学的な組織論はモチベーション(動機づけ)の理論の発展につながった。

一、 現代組織論

1、 バーナード
『経営者の役割』を著す。
○彼は会社や官庁などを、目的に向かって複数の人間が共同する枠組みとしての協動体系と呼んだ。そして、そこから物理的、社会的、人間的要素を協動体系から差し引いて全ての人間共同体に共通のものを「組織」と定義した。
○組織は[1]伝達、[2]共通目的、[3]貢献意欲の3つの要素から成り立つものと説いた。
○[1]伝達…命令は上司が発するだけでは成り立たず、部下に受け入れられて初めて成立する(権威受容説、機能の権威)。しかし、全ての命令が部下によって吟味されていたのでは、組織活動は麻痺する。よって、組織に属した時点で受容が当然とされている種類の命令が存在し、その種の命令は無関心圏に入っていると説明される(地位の権威)。さらに戦闘中の軍隊のように構成員の多くが組織の維持によって利益を受けている場合、命令拒否が慎まれる。すなわち無関心圏を維持しようという雰囲気が生ずる。
○[2]共通目的…命令が受容されれば、貢献意欲が引出され、共通目的の一定の達成が果たされる。この目的達成度を有効性というが、貢献意欲を提供した結果としてもたらされる構成員の動機の充足の度合いは能率と呼ばれる。有効性は高くても能率が低いことがある点に注意。
○[3]貢献意欲…組織の構成員は組織から提供される誘因と引換えに貢献を行う。この誘因には給与や地位のような特定誘因と、個人に帰し得ない交流や雰囲気のような一般誘因とに大別される。誘因と貢献の間に均衡が成り立たなければ組織は解体の危機にさらされる(組織均衡論)。

2、 サイモン
○『経営行動』を著す。
○意思決定をなすにあたっては、目指すべき目的を決める価値判断(価値前提)と、目的を達成するための手段を決める事実判断(事実前提)をなさねばならない。
○では、目指すべき価値を実現するのに望ましい行動を選択する(合理的意思決定)にはどうすれば良いのか。→まず、全ての代替的戦略を列挙し、そして戦略によって生じる結果の全てを確定し、最後にそれらの結果を比較評価しなければならない。→しかし、それは非現実的。つまり、現実世界の合理性は「限定された合理性」でしかない。
○限定された合理性の中で満足いくところで合理性の追求を止める人を経営人(管理人、行政人)といい、完全な合理性の下で価値の最大化を追求する経済人と区別している。満足最大化は充足モデル、価値最大化は最大化モデルとも言われる。
○目的は価値の問題で合理性が問えないが、目的を達成するための手段は事実の問題であり、その合理性の検証をなしうる。しかし、目的も上位の目的に仕える限りでは手段となり、合理性を検証されうる(目的−手段のヒエラルキー)

二、 政策決定論

○意思決定論を政策決定論にまで広げたのはリンドブロムである。
○彼はサイモンの合理的意思決定論を総覧的問題解決と呼び、非現実的であると批判した。
○彼はインクリメンタリズムを提唱した。インクリメンタリズム(漸変的問題解決)においては、前提として、現実の意思決定者は他人と目標を共有せず、自分の目標に役立つように決定を行う党派的意思決定者であるとされる。馴染みのある二、三の選択肢がもたらしうる今現在からの漸変分だけに注目して、意思を確定する。加えて当初より問題を完全に定義せず、問題の再定義を繰り返しながら、何度も問題に取り組む。場合によっては用い得る手段にあわせて目的を調整する(目的と手段を峻別しないともいわれる)。これを国家政策レベルで捉えれば、完全に定義された将来像の実現よりも、今現に治癒の必要な社会的病理への対応を考慮して政策決定は行われるのである。
○現時点での状況把握を重要視するリンドブロムに特徴的なのは、自分の利益だけを考えて、現時点からの少しの改良を得ようとするインクリメンタリズムが社会的に集積されれば、自動的に相互調節が達成されて公益に反しない合理的結果が得られるとする点である(党派的相互調節)。

三、 モチベーション論

※仕事に対する人間の動機づけに関する分析。特にマクベガーの理論が重要。
○マクベガーのX理論:仕事が嫌い−外的統制が必要−責任回避−大望なし−最小限の能力を基準に単一絶対の統制が主張される−その人の本性から仕事に限界が来る
○Y理論:仕事が好き−外的統制は不要−責任を希求−大望あり−その人の益々の発展が見込まれるから、発展に併せた選択的対応が望まれる−組織の管理の不手際からその人の仕事に限界が来る

 

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