第4話 官僚制
一、 ウェーバーの官僚制論
官僚制は命令伝達手段である。よって、官僚制論の出発点はいわゆる支配の正当性信念([1]合法的支配、[2]伝統的支配、カリスマ的支配)により、官僚制は[1]合法的支配の最も純粋な型に当たる。なぜならば、合法的支配とは、合法的に成文化された非人格的・没主観的な秩序に対する服従であり、官僚制では厳密な成文の規則に基づいて命令が出され、職務が行われるからである。[1]破壊の困難性、[2]組織一般での現出性がその特質として挙げられる。
1、 ウェーバーの官僚制論の特質その一(官僚制の機能様式)
[1]官庁権限の原則
i 職務上の義務としての権限の明確なる配分。
ii 義務履行のために必要な命令権や強制権の明確な配分。
iii 義務が資格任用に基づいて任命された人によって担われる。
[2]階層性の原則
i 権限は横方向ばかりではなく、縦方向にも厳密に配分されなければならない。すなわち上下関係は明確に規定されなければならず、命令系統が一元的に整備されることが求められる。
[3]規則に基づく職務…与えられた権限は成文のルールに依拠する
[4]文書主義…職務自体が文章化される
[5]公私分離…役所と私宅が分離されている(オフィシャルとプライベートの分離)
2、 ウェーバーの官僚制論の特質その二(官僚の地位)
[1]天職としての官職
i 全労働力が要求される兼業が不可能な仕事(専業制)。
ii 高度な教育を前提とした試験による資格任用。
[2]契約制(官僚の資格任用は志願者の自由な発意に基づく)、終身制、貨幣定額俸給制
cf家産官僚制(不自由な身分にある官僚からなる官僚制)、近代官僚制(自由な契約に基づいて官僚の地位に就く者によって構成される官僚制)
二、 官僚制の逆機能性を論じた学者
1、 マートンの「訓練された無能力」
官僚には職務の遂行に規則の遵守が求められるが、それが行き過ぎると規則の遵守が職務の遂行になる(目的の転移)。
2、 パーキンソンの法則
行政機関の職員は業務量に関わりなく、一定の比率で増大していく傾向にあるから、職員の数が抑制されるよう、努めなければならない。(我国における「行政機関の職員の定員に関する法律」)
3、 ピーターの法則
職員はピラミッド型組織において、年功序列に則り、往々にして自分の能力を越えた地位にまで昇進するから、能力評価による昇進を図るべきである。
三、 ストリートベルの官僚制…公的な給付や制裁を幅広い裁量の下に行う行政組織を指す。
そのような行政組織に属する行政職員としては学校教師、外勤警察官、福祉ケースワーカー等が挙げられる。
これらの行政職員の職務には把握しがたい人間の感受性が大きな地位を占めていることから、統制努力に関わらず広い裁量が発生してしまう。この裁量は「エネルギー振分裁量」(何をどの対象について行うかという判断)と「法適用の裁量」(法を適用するかどうかの判断)に分けられる。