第7話 予算
一、 財政民主主義と予算サイクル
予算とは一会計年度における国の財政行為の準則であり、立法形式の一つである。歳入と歳出から成る。歳入の主な財源は国民の租税であるから、租税の賦課徴収と使途については議会による統制がなされなければならない。(財政民主主義、憲法83条)
財政民主主義の具体的内容として、[1]租税法定主義(憲法84条)、[2]議会による予算承認(憲法60条、73条5号、86条)、[3]議会による予算執行統制(憲法62条、72条、91条)、[4]議会による決算承認(憲法90条)が挙げられる。
※これ以外に憲法第七章の条文をチェックしておくこと。
一つの予算は4年にわたるものであり、一会計年度には4つの予算が編成、執行、決算、決算承認の各段階にあるといえる。
二、 予算の種類
1、 歳入・歳出枠別
一般会計予算…歳入の大半は租税であり、各行政機関をとおして歳出される。
特別会計予算…歳入と歳出の性格が特定されるため、法律によって別個に設けられる予算枠である。(ex.郵便貯金特別会計予算、国民年金特別会計予算)
2、 時期別
当初予算…本来ならば3月までに国会の議決を受け、4月初めから翌年の3月末まで執行されるべき予算。
暫定予算…政治情勢などから当初予算案の議決が3月末までに行われない場合は政府活動の停止による混乱を避けるため給与等の経常費のみを盛り込んだ予算。
補正予算…経済状況の悪化や災害などによって追加の歳出が必要となった場合に組まれる予算。
三、 予算編成手法
1、 シーリング
シーリング…本来は天井板を意味するが、予算編成においては、各省の概算要求額の上限をいう。
ゼロ・シーリング…前年度予算額までしか概算要求は認められない。
マイナス・シーリング…概算要求が前年度予算以下でしか認められない。
2、 PPBS
PPBS…“Plannig,Programming and Budgeting System”の頭文字をとったもの。アメリカのジョンソン大統領下で用いられた。長期的な計画から、中期的な事業を引き出し、単年度の予算にその実現に最も適した手段にかかる経費を計上するシステム。目的に照らして最も合理的な手段を選択する上では手段の費用と、手段がもたらす便益との関連を分析する費用便益分析が不可欠となるが、最適な手段を求めるのは複雑であり、人間の感情が多く入り込む福祉分野では不可能に近い。よって、挫折した。
ゼロベース予算(ZBB)…アメリカのカーター大統領下に用いられた。ゼロベースとは予算配分を受けるべき活動単位が存在意義をなくすまで予算を減額した場合の状態をいう。それが社会的に影響を何ら与えなければ活動単位は廃止されるであろうが、そうでなければ当該予算は一定の社会的効果に結びついたことになり、より高い社会的効果を生み出すより安価な手段が模索される。しかし、その模索活動は複雑であり、挫折せざるを得なかった。
四、 予算編成過程
五、 会計検査院
1、 組織
○独立行政委員会である(内閣に対する独立の地位が保障されている。)
○検査官3人から成る合議制が採られ、検査官の任命には国会の同意が必要。
○内閣が会計検査院の予算要求を修正する場合には修正前の要求書も国会に提出しなければならない(二重予算制)。
○国家行政組織法の適用を受けずに独自に規則を制定することができる(内部組織権)。
2、 会計検査
○予算の執行中でも検査を行うことができる。
○会計検査院の検査は外部検査である。
○国の行政機関、法律上、検査が求められている組織、国が資本金の2分の1以上を出資する法人(特殊法人を含む)に検査は及ぶ。
○検査は[1]決算書が予算執行を正確に表示しているか(正確性)、[2]予算、法令、規則にてらして違反はないか(合法性)、[3]同じ効果をより安い経費で達成できないか(経済性)、[4]同じ経費でより高い効果を達成できないか(効率性)の見地からなされる。