第10話 選挙・選挙制度
一、 選挙の意義
○国民が政治に参加するには、政党への加入、圧力行動、直接請求権の行使等があるが、いずれもその効果は実効的であるとはいい難く、諸々の制約を伴う。この点、選挙は「国民が政治参加を制度的に保障された唯一の機会」であるといえる。
二、 選挙の機能
1、 リーダーの選出
○多数者である一般大衆によるリーダー(県知事、市長、内閣総理大臣候補としての国会議員)の直接・間接的選出。
2、 権威の正当化
○候補者の手腕、能力は選挙による洗礼を経てはじめて権威化される。また、禊の働きもある。
3、 政策選択、正統化、合法的機能
○候補者の公約が支持されて当選に至る場合、或いは国政に重大な問題が生じ、衆議院の解散総選挙が行われた場合はこのような機能を果たすといえる。
三、 近代選挙制度の組織原理
[1]政治参加の平等性(普通選挙) [2]一票等価値(平等選挙) [3]秘密選挙 [4]直接選挙 [5]政治活動の自由(自由選挙) [6]任意選挙
四、 選挙制度
1、 選出基盤による分類
○「地域代表制」…大選挙区制、小選挙区制
○「職能代表制」…職業ごとの代表選出であり、19世紀には職業団体の自治を高く評価するギルド社会主義の台頭により、第1次世界大戦後、欧州の一部の地域で試みられたことがある。
2、 代表決定方式による分類
○多数代表制=小選挙区制(多数派が勝利する選挙制度、当選者は一人。)
○少数代表制=大選挙区制、比例代表制(少数派にも議席獲得が期待できる制度であり、日本の参議院地方区の選挙制度が大選挙区単記制であり、1選挙区から複数の当選者を出すのが大選挙区制、単記制とは投票用紙に1名のみ記入することである。一方、比例代表制は議席数が各政党の得票率に比例するように配分する方式で、政党に投票する。日本では拘束名簿式のドント式といわれるものが採用されている。
五、 選挙制度の長所と短所
1、 小選挙区制の長所と短所
長所 | 短所 |
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a 政治的安定 | a 死票が多い |
b 費用がかからない | b 地方利益代表になりがち |
c 政策選択をしやすい(政党本位になりがち) | |
d (多数決のため)結果が分かりやすい | |
e 区割変更の必要性 |
2、 比例代表制の長所と短所
長所 | 短所 |
---|---|
a 死票が少ない | a 政局不安定 |
b 費用がかからない(地方利益代表にならない) | |
c 区割変更の必要がない | |
e 政党本位になる | e 人物要因による選択不可 |
f (制度が複雑で)結果がわかりにくい |
六、 選挙制度改正
1、 沿革
我国は1890年の第1回帝国議会衆議院議員選挙時は原則として小選挙区だったが、1925年にいわゆる中選挙区制(大選挙区制の一種)が導入されて以来、一貫して中選挙区制によって衆議院選挙が行われてきた。
1994年の政治改革によって政党本位のシステムづくりが目指され、その一環として選挙制度に関しては政策論争の活性化、金のかからない選挙、定数是正が課題となり、その結果、定数500の小選挙区比例代表並立制が採用された。
2、 改正の問題点
[1]並立する両制度への立候補が可能であり、並立とはいいながら、小選挙区におかれるウェイトが大きすぎる
[2]定数是正が不徹底に終わり、格差2倍以上の選挙区が多く残されている。
[3]政党本位とはいえ、選挙運動規制が厳しく、小政党は抑圧され既成政党が活躍しやすくなっている。
七、 投票行動の特徴
[1]個人的要因中心、[2]農村部の投票率が高い、[3]地方レベルの投票率が高い、[4]衆議院議員選挙の方が参議院選挙よりも投票率が高い、[5]近年、女性の方が投票率が高い