第12話 圧力団体
一、 圧力団体の意味
圧力団体とは、「特殊的個別的利益の擁護増進のため、権力中枢に働きかけることによって、政策決定に影響力を及ぼそうとする団体」。
二、 政党との差異
[1]政党は政権獲得を目的とするが、圧力団体はそうした目的を有しない。
[2]政党は包括的一般的利益を対象とするのに対し、圧力団体は特殊的個別的利益を取扱う。
三、 圧力団体の類型(R.T.マッケンジーによる)
[1]部分利益集団…社会の一部を構成し、部分的機能を果たす集団として自らの集団内の共通利益擁護を図る、よく組織化され強固、巨大集団であることが多い。
[2]促進団体…具体的利益というよりもむしろある一定の社会的主張や社会正義の実現を目指す。
[3]潜在的団体…日常的組織を有せず、たまたま社会的に共通の立場に立った人々が結集する団体。または、アドホックな(その場限りの)問題を取扱う。
四、 圧力団体の存在意義
○圧力団体が現代政治過程論に占める意義は「政党の機能不全を補完する」ということに集約される。
○参考資料
※ネオ・コーポラティズムとは議会政治を補完する新たな政治参加の形態として民主主義理論の立場から議論された。即ち、巨大な圧力団体の代表が各種の政府委員会(審議会、諮問委員会)のメンバーとして参加し、国家の政策決定過程に関与する。そうした中において、各団体はそれぞれの利害の相互調整を行い、妥協、協調を図りながら、集団各々の利益の利益の部分的実現がよろしく達成されるというものである。しかしながら、圧力団体の問題一般に共通する問題性として、このネオ・コーポラティズムも選挙を通じた国民の審判を仰ぐ必要がなく政治責任の所在が不明確になりがちであり、巨大組織のみ脚光があたるという弊害を免れない。
五、 圧力団体の機能
1、 利益結節機能
[1]利益の種類:特殊的・個別的利益またはその場限りの一時的な利益が基本。
[2]利益調節の仕方:政党が国民各層に広がる包括的利益を扱うのに対して、圧力団体は個別の諸利益のきめこまかな調整・吸収を行う。
2、 地域代表制を補完する機能
我国は衆議院議員選挙において、小選挙区比例代表並立制をとっているとはいいながら、その実は小選挙区制に重点が置かれている。そこにおいては、議員の地域代表性を否定することはできず、地域の利益になる政治を行いがちである。そこで、圧力団体が一般に票になりにくいといわれる利益を結節するのである。
六、 圧力団体の問題点
1、 少数派の過剰代表…圧力団体は実は少数派だ。
2、 政治参加のパラドックス…圧力団体には高学歴、高収入の人が大勢いる。
3、 政治責任の不明確性…圧力団体は選挙を経ていない。
4、 密室での取引
5、 集団エゴイズム…圧力団体の活動は公共性を損なう。
七、 アメリカの圧力団体
1、 特色その[1]…ロビイストの存在
ロビイストとは「法案の可決や否決、法案の内容、あるいは政府の行政的決定に影響を及ぼすために活動する圧力団体の代理人」と定義される。州権が強く、三権分立の厳格なアメリカでは、まず州議会においてロビイストが現れた。
2、 特色その[2]…立法活動中心
アメリカでは連邦レベルの政党組織がなく、議員は独自の判断で行動できる。このため、ロビイストは州議会のみならず、連邦議会にも活動の拠点を持つようになった。
3、 特色その[3]…行政部への拡大
ニューディール政策以降、行政権の拡大が著しく、ロビイストは行政各部にも活動の拠点を見出すようになった。また、汚職等が蔓延したため、ロビイストの活動を規制する「連邦ロビイング規制法」も制定され、さらにマスメディアを通じ、世論に働きかけることを通じて活動する「グラスルーツ・ロビイング」という公開的方法が重視されるようになった。