第5話 民主主義
一、 デモクラシーの諸相
1、 民主主義…市民革命(学識者、地主、実業家等有産階級が活躍)において脇役として切り捨てられた都市下層民、農民等無産階級が革命の成果の分け前を要求する運動としてうまれた。即ち、できるだけ多数の人々の政治参加を実現させ、それによって社会の枠組を変化せしめ、もって政治的平等を確立せんとする運動である。
2、 自由民主主義…大衆の政治参加を求める民主主義思想は、当時特にヨーロッパで支配的イデオロギーとされていた自由主義とは対立するものであった。両者を結び付けようとするのが、自由民主主義という理念である。アメリカでおこったジャクソニアン・デモクラシーをフランス人A・C・deトクヴィルが『アメリカにおけるデモクラシー』で紹介することによって一般化した。
3、 功利主義…「社会のなるべく多くの人を幸福にすることが善であり、その反対が悪である。」と考え法律制度の改革と立法によって功利を生みだそうとした。
○より多くの人民の政治参加を実現する代議制=議会制民主主義の確立の必要性『代議政体論』(J・Sミル)
○「最大多数の最大幸福」(J・ベンサム)の追求
4、 保守主義…王の専制に対しても、革命による人民の専制に対しても反対する立場。伝統の中にこそ理性法則としての自然法が宿るのであり、そして伝統とは王、貴族、庶民の勢力均衡とそれを制度的に保障した議会制度である、とし革命がもたらす安易な伝統破壊と革命の行き過ぎに警鐘を鳴らした。『フランス革命の省察』(E・バーク)
5、 社会民主主義…民主主義はその出現当時、自由主義と相対立するものであったため、同じく自由主義に対抗する社会主義と融合しやすく、そこから生じた理念。選挙を通じた民主的手段でもって社会主義を実現させようとする。
6、 人民民主主義…議会制度を階級的搾取の道具として捉え、暴力革命によって政治体制を根本的に覆した後に労働者階級の独裁の実現を図る。
7、 議会制民主主義…後述
8、 参加民主主義…大衆の政治参加は議会に非合理的、情緒的要素が議会に持込まれ、行政国家現象と相俟って議会の権威を低下せしめた。そこで、見直されたのが直接民主主義である。(憲法95条、96条、地方自治におけるリコール、地方議会の解散請求、条例の制定、改廃請求、監査請求等)
9、 ポリアーキー…R・Aダールは『ポリアーキー』において「公的異議申し立ての自由」と「政治参加の包括性」が確立されていれば是であると示した。