第9話 政策決定過程
一、 大日本帝国憲法と日本国憲法の違い(統治について)
1、 議会の地位…天皇の協賛機関
2、 議会の権限…天皇にも立法権あり
3、 両院制…非民選の貴族院と民選の衆議院。両院対等
4、 立法過程…本会議中心主義
5、 議会と内閣との関係…内閣は議会に対して責任を負わない
6、 内閣における首相の地位…同輩中の首席
二、 一党優位体制
・ 法的、政治的に自由で平等な選挙が行われ、それにより一つの政党が長期にわたって政権を担う体制。
・ 我国では1955年、左右社会党の統一に触発され、保守の民主党と自由党が合同し自由民主党が結成された。それにより日本社会党と自由民主党の二大政党制の実現が期待されたが、自民党が圧倒的優位を保持し、「一ヵ二分の1政党制」であると揶揄された。
三、 鉄のトライアングル
・ 一党優位体制は、政府与党、官僚、財界の三者の緊密な協力関係を産みやすい。
・ 政府与党は官僚から優秀な人材を補充し、官僚は予算獲得にあたり、政府与党に陳情する。一方官僚は財界に許認可行政を施政し、財界は官僚に天下りポストを用意する。さらに政府与党はいわゆる審議会政治によって財界に利益配分をなし、財界はそれに対して政治資金、選挙の際の票の取りまとめを行う。
四、 政治改革関連(四)法(細川連立内閣)
1、 改正公職選挙法…小選挙区比例代表並立制の導入と選挙違反での連座制の強化等
2、 衆議院議員選挙区確定審議会設置法…いわゆる区割法
3、 改正政治資金規正法…政治家個人への献金を制限し企業、団体献金の原則廃止が方向付けられた。政治献金の公開基準が引き下げられ、資金の流れの透明度が増した。献金は政治家個人に対してではなく、政党に対して行うものであるべきことが明確にされた。
4、 政党助成法…一定の条件により、法人と認められた政党には政党交付金が国庫から助成されることになった。
五、 官僚制
官僚制の概念は多義的であり、広い意味で言えば行政官僚のみならず、あらゆる巨大組織に共通する組織形態である。つまり、ある一定の目的達成という明確な目標を持った組織集団(企業、軍隊、政党、圧力団体)は効果的な目標の達成とそのための能率的な組織運営の必要性から、一元的な命令、監督系統のもとでの階統的仕組みを形成する。これが官僚制であり、その理念型を明確にしたのがM・ウェーバーであった。彼は官僚制を分析することにより、官僚制というシステムを合法的支配形式をとる近代国家を代表するシステムと位置づけようとした。彼は官僚制を正確な予測可能性、計算可能性をもつ組織として捉えた。
●官僚制の特徴
[1]権限の原則…組織の各部門における権限の範囲が法律で明確化されている。
[2]階統制の原則…官庁、諸機関の間が命令服従系統として階層的構造になっている。
[3]文書主義の原則…文書による記録を基本とし、職務の過程、責任の所在を記録する。
[4]専門の原則…専門化による分業のシステムの中で専門的資格をもつ者でかつ公務を専業とする者が業務を行う。
[5]公私区別の原則…公務のための資材と私的なものとが分離されている。
●官僚の職務について
[1]機構、秩序、職務目的に対する職務忠実義務(人に対する義務ではない)
[2]社会的に高い身分的地位が認められ、社会的エリートとされる
[3]任命は上部機関が行い選挙制によらない。
[4]ほぼ終身的地位(但し、地位はその者の専有ではない。)貨幣報酬と年金の保障
[5]年功序列と専門試験による昇進
●官僚制の問題点
[1]法規万能主義…融通がきかない
[2]形式主義・繁文縟礼…形式的手続にこだわる
[3]セクショナリズム…縄張り意識
[4]権威主義
[5]特権意識
※アメリカの社会学者R.マートンは官僚が目的遂行のために設けられたルールが自己目的化しいたずらに形式や手続を重視するようになると官僚の行動は定型的になり、新しい事態への対応力が失われ、却って能率が低下するジレンマを指摘して「官僚制の逆機能」と呼ぶ。