目からウロコの行政学入門
行政学の目的〜公務員は怠け者!?〜
みんな、公務員試験の受験勉強もそろそろなれてきたと思うけど、初心にかえって、なんで公務員になろうと思ったの?不況に強いから?五時に仕事が終わるから?余暇が沢山あるから?結婚してもやっていける仕事がしたいから?下手な民間企業に比べて給料が高いから?それとも滅私奉公?法律を執行したい?まあ、人それぞれ色々あるでしょう。
実は僕の従兄弟も現在大学三年生で公務員試験の勉強しています。彼はサーフィンが趣味でこのクソ寒いのにスーツ着て波乗りしてます。そんな彼が目指しているのが裁判所事務官。なんでかって?仕事が楽だから。毎日仕事を五時に終えてそんで、毎日波に乗りに行くのが彼の夢らしい。「はぁ〜、こんな奴が公務員になったら税金の無駄やで。」と思いながらも、僕は彼に勉強教えてやってるんですけどね。でも、みんなの中でもこういう理由を抱いている人多いんちゃう?大概の人が、「公務員って仕事の割に給料ええし、余暇も充実してるよなぁ」って思ってるんちゃう?
なんでか。なんで、公務員って五時に帰れるん?不況に強いの?仕事楽なん?なんで?それはズバリ、「営利を目的としていないから。」これに尽きます。民間企業みたいに顧客に頭下げて、商品を買ってもらってそこから自分の給料を得るわけじゃない。顧客っていうか住民、国民に頭下げなくても、税金は入ってきます。っていうか税金払わん奴には刑罰さえも科してしまう。そんでもって、自分は生活していく。だから公務員って魅力的な仕事なわけです。でも、逆に公務員が一生懸命仕事しても、昼飯抜いて、残業バリバリして、休日も返上、って感じで仕事しても彼の給料は上がりません。だって、その組織自体の生産高が彼が働いた分だけアップしたわけじゃないから。(勿論、多少の残業費はつきますが、お間違えのないように)だから、公務員は仕事を熱心にしない。少なくとも昔はね。だって、やってもやらんでも給料が同じだったら、そりゃ、やらんでしょ。そっちの方がお得やし?みんなも経験ない?大きな会社なんかでアルバイトをする、そんで自分みたいなアルバイトがいっぱいおる、そういう場合、「俺一人さぼったって、分からんやろ。どうせ、サボろうが、サボるまいが時給はいっしょやしぃ。」ってな感じで、ちょっと一服。あるでしょこういう経験。別にアルバイトでなかってもいいよ。学校の掃除なんかでもいい。要するに人間っていうのは非営利の活動を巨大な組織でもってする場合はどうしてもサボってしまうという性をもってるわけ。この性質が特に顕著なのが公務員なんです。(江戸時代版公務員である侍というか、役人をイメージしてもいいよ。)
公務員って仕事は公正中立を旨とし、国家天計を論じる仕事だがらちゃんとやればメチャメチャ素晴らしい仕事だと思うけど、一度おちると、行くとこまで行ってしまうし、本人はケロッとしているってな具合なわけです。ちなみに公務員だけが収賄罪の対象になる。
そんな訳で行政学という学問が生れた。要するに行政学とは国家権力のうち行政を担う公務員の仕事を効率化させるための学問なんです。そんで、その射程距離は公務員の仕事のみならず、組織体一般の仕事にもおよぶわけ。役所をはじめとする組織体の職務一般を如何に効率的に進めていくかということが行政学の目的です。
行政学の大要
では、職務一般を効率的に遂行していくにはどうすれはいいか?別に大袈裟に考えないで。例えばみなさんが受験勉強を効率的にやるにはどうすれはいいわけ?考え方としては二つあるでしょ。自分自身を見直し、セルフコントロールでもって勉強遂行のシステムを構築していくという内的要因に訴える方法。それから、親や兄弟、友人、或いは講師等第三者から叱咤激励、或いは批判、アドバイスをうけるといった外的要因に訴える方法。
行政の仕事も基本的には同じ。ともすれは停滞し、マンネリズムに陥りがちなその職務を役所の自助努力によって改善していくという方法と、行政以外の存在、すなわち国会や裁判所、オンブズマン、市民団体等から統制でもって行政を洗練させていく方法。だから、行政学ではこの職務を効率的に遂行する上での内的要因と外的要因を主に勉強するわけだけど、内的要因の方が範囲も広くて試験にもよく出題されます。それから、行政学の享有事項※1として、行政学の歴史が大事。絶対主義の時代から現代までの行政学の移り変わりが出題されます。
まとめてみると、行政学の大要としては、行政学の歴史、職務を効率化させる内的要因、外的要因以上の三つが挙げられます。
他の科目との関係
〜政治学との関係〜
行政学も政治学同様、コマ数が少ないですから、他の科目と関連する部分を意識しながら、効率的に勉強をすすめていくことが望まれます。まず、行政学は学問的体系においては政治学に属しますから、政治学との絡みは重要です。政治学の一分野として行政学が存在するので、はじめは政治学に比重を置きながら勉強するのがいいでしょう。
〜憲法との関係〜
前述の外的要因の箇所、これを行政統制といいますが、国会による統制、裁判所による統制が出題されますので、憲法の理解が不可欠です。それから、委員会という単元があるけど、ここでは憲法の独立行政委員会の理解が必須です。
〜行政法との関係〜
以前、行政法つてギョウセイって名前の新種の虫を創造して、その虫がどんな仕組みをしているのか(行政組織法)、どんな動きをするのか(行政作用法)、国民や住民に噛み付いた場合、噛み付かれた者はどのように救済されるのか(行政救済法)の三つの部分に大別される旨、お話しました※2。行政学ってのはその三つについて社会学的見地から分析するものです。特に行政組織法、行政作用法は内的要因に、行政救済法は外的要因(行政統制)に対応するでしようね。
それから、行政法で勉強する国家行政組織法は行政学でも勉強します。だから、六法を持ってきてね。
〜歴史〜
世界史からは絶対王政、世界恐慌、ニューディール政策、世界大戦、冷戦等といった事柄が出題されます。日本史においては明治維新、大正デモクラシー、55年体制とその崩壊等が必須です。
〜時事問題〜
新聞は毎日必ず読みましよう。紙で読もうがネットで読もうがそれは自由ですか、1面、政治面、経済面、社会面、国際面は毎日、問題意識を持ちながら読むように心がけて下さい。
まとめ
政治学ともども近年の行政学の出題傾向は難化の一途を辿ってます。しかし、政治学もそうですが、行政学は特に純然たる行政学の知識という点では基本的なことしか出題されてはいません。難しいと感じるのは政治学、行政学を勉強する上で、他の科目との関連付けが出来ていないから。だから他の科目を勉強する場合も必ず、政治学、行政学を意識しながら勉強して下さい。
ソクラテスメソッドについて
僕の講義は出席簿を使わずにアトランダムに当てているでしよ。そういうのをソクラテスメソッド(ソクラテスの手法)と言います。ギリシャの哲学者ソクラテスが最初に始めたから。最近ではハーバード大学でもこの方法が用いられているのでハーバードメソッドとも言います。日本でも法科大学院でこの方法が採り入れられる予定です。(既に取りいれている大学も多くありますが)
このソクラテスメソッドですが大教室における講義においても講師と受講生の双方向的なコミュニケーションを実現するための手法です。これを実現することによって講師の自己満足的講義を排除し、受講生の理解を一層高いものにすることが出来るわけ〈理想論かもしれんけど)。
僕は基本的に当てられたそうな顔をしている人しか当てませんけど(笑)、できるだけみなさん、当てられたそうな顔をして下さいね。やっぱり、大勢いる前で自分の考えを謙虚な姿勢でしかも堂々と表明することは二次試験における面接や集団討論の訓練になること請け合いですから。っていうかねぇ、普段からこういう訓練をしておかないと、いざ集団討論とかで舞い上がっちゃって、ベラベラクチャクチャ喋って、挙げ句の果ては試験官に「もう、発言しなくて結構です。」なんて言われて、落とされてしまう場合もあるからね。逆に緊張のあまり一言も発言できないということも…。ポイントは謙虚に〈当てられたら、答えが分からなくても返事は必ずして、発言する際は笑顔で)、堂々と(信念を持つ)振る舞うということです。
というわけで、今後もソクラテスメソッドをよろしく。
※1 拙稿「目からウロコの政治学入門」
※2 拙稿「目からウロコの行政法入門 Part1」