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目からウロコの 行政学入門

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第1話 アメリカ行政学

一、 行政学前史…アメリカ行政学に影響を及ぼすものではないことに注意

1、 前期官房学
○官房学(カメラリズム)は、16世紀中頃から18世紀末頃までのドイツ・オーストリアにおける絶対主義国家の確立期に発達した学問である。
○「官房」とは君主の部屋を指す。
○前期官房学は官史は君主の財産をいかに殖やすか、というところに主眼がおかれていた。(未分化の状態)

2、 後期官房学
○後期官房学の代表的論者ユスティは前期官房学の未分化性を批判し、財政学と警察学の分離を主張した。ここでいう警察とは国家の資源を用いて公共の福祉を達成する全ての活動を含む概念である。
○後期官房学は「公共の福祉」という個人の自然権の保障を求める自然法思想を取入れ始めたが、「公共の福祉」という概念は不明確で、結局は君主の利益ということに落ち着いていた。
○この意味で、後期官房学は絶対君主の統治のための学という性格に留まっていた。

3、 シュタイン行政学
○市民に参政権が与えられ、近代市民社会が成立し始めると絶対主義に基づく官房学は衰退を余儀なくされた。絶対主義の下では決定と執行が同一者によって行われていたが、両者の分離が求められるようになったのである。(シュタイン『行政学』)
○シュタインは国家はそれ自身が意思と自我を有する人格にまで高められた共同体であり、憲政と行政の二つの原理が国を支える。憲政とは国家の意思を形成する過程であり、これへの参加が個人(市民)に認められている(近代市民社会の理論の基礎)。一方、行政とは憲政が形成した国家意思を実現する過程である。
○憲政と行政は対等の相互作用関係にある。

4、 行政法学
○憲政に相当する立法を行う議会の行政に対する絶対的優位を説く。すなわち法治国家の理念に依って立つ法律による行政を求めた。

二、 アメリカ行政学

1、 行政学誕生以前

[1]猟官制
○選挙での貢献度に応じて当選の戦利品(スポイルズ)である官職を分配する官職任命方法。
○ジャクソニアン・デモクラシーにおいて確立。「読み書きができれば誰でも官職を担える。」

[2]職能国家
○猟官制は行政の専門能力の発達と能率の向上を妨げてしまった。

[3]資格任用制
○政治信条に関わりなく官職を遂行しうる資格を持つ者を任用する方法が整備されなければならず、資格任用制、政治的中立性が要求された。→1883年のペンドルトン上院議員の連邦公務員法

2、 政治行政二分論

[1]ウィルソン
「行政の研究」を著した。
○政治と行政を二分する見地から「行政の領域はビジネスの領域である。」、「行政は政治の固有の領域の外にある。」と述べた。
○ウィルソンは行政の能率を追求する管理技術の問題に専心したため、彼の学説を技術的行政学とも称する。

[2]グッドナウ
『政治と行政』を著す。
○政治とは国家意思の表明であり、行政とは国家意思の執行である。
○政治は行政を統制しなければならないが必要な限度を超えることはできない。
○行政の機能としては[1]準司法的機能、[2]行政技術機能、[3]単純執行機能があり、[3]のみが政治の統制に服する。

[3]ホワイト
○科学としての行政学、最初の教科書といわれる『行政学研究序説』を著す。
○「行政とは国家の目的を達成する上での人と資材の管理である。」と定義付けた。

[4]ウィロビー
『行政の諸原理』を著す。
○科学としての行政学の確立のために、政治と行政の一層の分離を図った。そのために行政府(広義)を執行府(選挙で選ばれた大統領によって担われる)、行政府(狭義、専門知識を有し、政治的中立性を保った公務員によって担われる)に分類した。

[5]ギューリック
○科学としての行政学を完成させ、『管理科学論集』を著した。
○1937年にルーズベルト大統領が設けた「行政管理に関する大統領委員会」(別名ブラウンロー委員会)に参画。

3、 政治行政融合論

[1]アップルビー
『政策と行政』を著す。
○政治と行政は一体不可分のものとして捉え、行政の政策決定という機能に主眼を置くがゆえに、機能的行政学と称される

[2]ダール
「行政の科学−3つの問題」を著し、科学としての行政学の実現は難しいと主張。
○すなわち、i 行政の問題が規範に関わり、ii 行政学には人間行動の研究が含まれ、iii 行政には社会的背景がある以上、(1)規範の位置づけが明らかになり、(2)予測可能なほどに人間行動が理解され、(3)国境や歴史を越えた原則を見出せなければ、行政の科学は成立しない、と説いた。

[3]ワルドー
『行政国家』を著す。
○これまでの行政学を「特定の経済的・社会的・政治的・イデオロギー的事実と結びついた政治理論」に過ぎないとし、行政の問題を「本質的に規範的な性質のものである」とし、「価値の問題は科学的処理になじまない」と断言する。

 

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