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目からウロコの不動産物権変動論

物権変動とは…

 物権変動とは、物権を取得したり、失ったり、内容が変更されたりすることを総括した概念です。例えば、177条をみてみると「不動産に関する物権の得喪及び変更は…」と規定されていますが、これは「不動産に関する物権の変動は…」と置き換えて読むことも可能なわけです。

 じゃあ、具体的にどのような場合に物権変動がなされるか、その要因は3つある訳ですけど、まずは(1)売買や贈与、取消といった法律行為、次に(2)時効や相続といった法律の規定、さらに(3)自分で家を建てる、或いは火事や地震なんかで家が消滅するといった事実行為。こんな感じですね。

 物権が変動すると、利害関係人同士で売った、売らない、買った、買わない、等といったもめ事がおこりやすくなります。だから、物権変動に関するルール(不動産の場合だと主に177条)は事件の解決に非常によく使われるし、だからこそ試験にもよく出題されるのです。ここが分からなかったら、この先民法に関しては結構つらいよ。


公示の源則と公信の原則

 例えば、子供の頃、「自分の持ち物には名前を書きなさい」って小学校の先生なんかによく言われたでしょ?帽子や傘に始まって、挙け句の果てはパンツにまで名前を書いたりしてましたが…。名前を書くことによって、「この傘は俺のだよ。間違わんといて。」という感じで世間にアピールしていることになります。さすがに大人になると自分の所持品にいちいち名前こそは書きませんが、黙示にアピールはしているでしょ。アピールをしていなかったら、誰かが間違って持って行ってしまうかもしれないし、自分の知らないところで、自分の持ち物が取引の対象とされてしまうかもしれない。だから、アピールするんだよね。このアピールと言うのが公示制度です。そんで、公示の原則とは、物権変動があったならば公示をしなければ、この品物は俺のだよ、ってアピールをしなければ物権変動があったことにはなりません、という原則です。物権変動があったら、アピールをする。そうすることによって世間の人は、「あの品物はAさんの物なのだな。じゃ、Aさんと取引しよう。」ということになるわけです。すなわち公示の原則は取引の安全を図るための制度ということになります。

 このアピールの方法ですが、動産の場合だと引渡(178条)、不動産の場合だと登記(177条)ということになります。

 一方、公信の原則とは、その公示が虚偽であろうとも、その公示を信頼して取引に入った人を保護してあけよう、という原則です。例えば、Aさんが自分の物ではないのに、自分の物だとアピールをしている場合、その虚偽のアピールを信じてAさんからその品物を買ったBさんを保護してあげましょう、本来ならばAさんは無権利者だからBさんはAさんから品物の物権を得ることはできないけれども、それだと取引の安全を害するから、Bさんは品物の物権を得ることが出来ますよ、という感じです。

 民法は不動産の物権変動にぉける登記については公信の原則を採用していません。すなわち虚偽の登記を信用しても保護されないということです(94条2項類推適用のところでぉ話したので、ノートを見てぉいて下さい)。一方、動産の物権変動にぉいては192条の即時取得との兼ね合いから公信の原則を採用しているといわれています。


177条について

 177条は、「不動産に関する(1)物権の得喪及び変更は登記法の定むるところに従ひ、(2)その登記を為すにあらざればこれを以って(3)第三者に対抗することを得ず。」と規定されています。これは不動産の物権変動に関しての対抗要件(他人の優先して権利を主張するための条件)は原則として登記という公示を具備しなければならない旨を宣言しています。本条と176条をあわせて読むと、意思表示だけで物権変動は起こるけれども、その効果を取引した当事者以外の者に主張するには登記を備えなければならない。すなわち公示という登記を備えなければ完全な権利を主張できないということになっているのです。これは不動産の物権取引の安全を図るという趣旨に基づくものです。

 177条の趣旨を理解した上で、177条の読み方を簡単に説明しますが、まず(1)ですね。ここは前述の通り物権変動と読み替えて下さい。

 次に(2)ですが、物権変動が生じたならば如何なる場合でもすべて登記を具備することが必要である旨述べています。取消や時効、相続、解除も物権を得る要因ですから、登記をしてぉく必要がある訳ですね。もし、漫然と登記をせずにほったらかしにしてぉくと、物権を第三者に取られてしまうというリスクを負ってしまうわけです。この点はテキストの121頁「法律行為による物権変動(復帰的物権変動)」、123頁「相続による物権変動」、124頁「時効による物権変動」にぉいて重要なポイントです。

 最後に(3)。判例は第三者とは当事者若しくはその包括承継人以外の者であって、不動産に関する物権の得喪、変更の登記ケンケツを主張する正当の利益を有するものをいう、としています。試験的にはまず、悪意の第三者も177条の第三者であるということを押えて下さい。例えば94条2項では「善意の第三者」と規定されていますが、177条は単に第三者と規定されているだけでしょ。また、資本主義経済社会にぉいてはその是非は別にして「カネ」が全てですから、AさんがBさんに不動産を売却して、Bがまだ登記を具備していない場合、Cさんが「俺ならもっと高く買うのにのになぁ。Aさんよぉ。」と言ってAさんに商談をもちかけるのもOKであり、この場合、CがAから既にBに売ったはずの不動産を買い、Cがその登記を具備するならば、Cがその不動産の持ち主としてBに自分の所有権を主張できるということです。まぁ、民法学者の教科書にも書かれていますが、資本主義経済社会というのは「食うか食われるかの戦い」だそうです。例えば就職活動なんかで既に内定をもらっているんだけども、もう少し企業を受けてみる、とか企業の方も内定が既に出ている学生を取り崩しにかかってくるなんてのも、177条の第三者の話と同次元のことですね。

 ところで、そもそも177条の趣旨は前述の如く、不動産物権変動の取引の安全を図るという趣旨の下にあります。とするならば、ある意味泥棒のような不法占拠者や背信的悪意者に対しては取引の安全を図る必要がないので、彼らは第三者にはあたりません。

 まぁ、こういう感じで趣旨から考えるという訓練を法律を勉強する上では大事にして下さい。そうすることによって、細かい知識は後から付いてくるようになります。


余談

 ところで、この世の中に「法」と呼ばれるものはゴマンとありますが(我国の法規範の数は約三万らしいです)、なぜその中でも民法を勉強するのでしょうか。大の大人が大学教授として民法の研究に一生を捧げるのでしょうか。逆になんで、売春防止法の大学教授とかおらんの?(笑)民法は私法の一般法やから?或いは、憲法とか99条までしかないのに、なんで教科書分厚いの?

 それは法学というのは、抽象的な法の文言(もんごん)を補うための学問だからです。もっと言うと、法律上の言葉の解釈学な訳です。だから、特別法たる売春防止法の文言は具体的だから研究のしようがないわけ。

 公務員試験における民法も解釈学である。だから条文の文言に従って勉強していくのが王道なわけ。だから、テキストなんかも条文の解釈という点に視点を置いたものを選ぶ必要があるわけなんやけどね。でも、そういうテキストは公務員試験参考書としては残念ながら私の知る限り出版されてません。何が言いたいかって言うと、講義はテキストよりも条文を中心に進んでいくよ、っていうこと。チャンチャン。

 

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